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コラム

 「そういうことになっている?」

以前放送していたNHKの連続ドラマの主人公「あさ」は、明治を代表する女性実業家の広岡浅子さんがモデルとなっています。京都の豪商の四女として生まれ、幼い頃から裁縫や茶の湯、生け花や琴などの習い事を強いられますが、それよりも四書五経の素読など学問に興味を持ちます。しかし、「女に教育は不要」という当時の習慣により、親から読書を禁じられて育ちました。

 

ドラマの中では、相撲を取って女中に叱られ、「どうして女は相撲を取ってはいけないのか」と質問すると、大人は「そういうことになっている」としか答えません。そんな習慣に疑問を持ちつつ、大阪の豪商加島屋へ嫁いでからは、算術や簿記などを独学で学び、傾きかけた家を救った広岡浅子さん。彼女の生きた時代は、1849~1919年、百年以上も前の古い時代です。「そういうことになっている」という習慣に従い、やりたいこともできずにいた多くの女性たちの中にあって、古い習慣に疑問を持ち、自ら学び力をつけ、男顔負けの数々の事業を成功させ、晩年は女子教育に奔走したという経歴の持ち主。

 

着目すべきは、「そういうことになっている」という習慣に疑問を持ったこと、そして自分にとって窮屈な習慣を打ち破る勇気があったことだと思います。

 

男女共同参画社会の形成が進んできた現代でも、まだ、家事や育児をするのはお母さん、外出は夫の許可が必要、など「そういうことになっている」ことに窮屈を感じている人も多数いるのではないでしょうか。

 

こうしたい、ああしたいという個人の希望を阻むのが、「そういうことになっている」といういわれのない習慣だけだとしたら、家族の理解と協力でそれを改善することが充分可能だと思います。それこそが男女共同参画社会の根底にあるものだとつくづく感じるのです。

 

              函館男女共同参画メールマガジン「HAKODATE☆かがやきネット94号」(平成27年9月30日発行)より