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コラム

「木の上に立って見る」

「毒親」という言葉をご存じですか?読んで字のごとく、子どもにと って「毒」になる親のことを言います。もちろん虐待する親も含みますが、定義としては、子どもを過度にコントロールしようとするあまり、子どもにとって「毒」になる親のこと。

 

2001年に発行された、アメリカの精神医学者であるスーザン・フォ ワードの著作「毒になる親」という本のタイトルから生まれた造語で、具体的には、子どもを自分の思い通りにしたくて指図ばかりしたり、食事や睡眠、服装や髪形などを異常に細かく詮索したり、学校や仕事、友人や恋人選びにまで介入してくるなどの特徴があります。

 

つい先日もTV番組で「急増する現代病」として取り上げられていたのでご存じの方も多いことと思いますが、日本でも今、とても深刻な問題とされています。

 

毒親の元で育った子どもの特徴としては、人を信じられない、穏やかに他人と接することが出来ない、誰かの指示がないと動けない、常に人の目を気にするようになるなど、人格形成に悪影響を及ぼすようです。

 

一方、これとは逆に、親子仲良しで子どもに反抗期もなく、いつも一緒に行動を共にしている「友だち親子」と呼ばれるような親子関係にも、自分では何もできない未熟な大人に成長してしまう危険が潜んでいるようです。子どもは自立の機会を失い、親は子離れできない「親子共依存」という現象に、「頼り過ぎる子どもとお世話しすぎる親が、互いの成長を阻害し合って、日本社会全体が未成熟な状態に陥っている」(尾木直樹/著「親 子共依存」より)と警笛を鳴らすのは、教育評論家で法政大学教授の尾木直樹氏。

 

親の価値観を子どもに押し付けるのではなく、また、歩く先の障害物を全て親が取り払ってやるのでもなく、子ども自身が考えて行動し自立できるように見守り、困った時に手を差し伸べてあげるというくらいの適度な距離感が必要だということですね。  

 

「親という字は、木の上に立って見ると書く」、まさにその通りなのかもしれません。

 

               函館男女共同参画メールマガジン「HAKODATE☆かがやきネット89号」(平成27年4月30日発行)より