主人公の桃子さんは、東北出身の70代。
24歳の時に故郷を飛び出して、身ひとつで上野駅に降り立って
から、住み込みのアルバイト、結婚、二児の誕生と成長、そして
夫の死を迎えます。「この先一人で、どやって暮らす。こまったぁ
どうすんべぇ」そんなことを考え、ひとりお茶をすすりながら断片
的に半生を振り返り、悲しみの果てに辿り着いた「気づき」は、圧
倒的自由と賑やかな孤独。心の内側から湧き上がる東北弁の独り言
と、斜め上から自分を見つめて第三者のように語る言葉で構成され
た小説です。著者は55歳から小説講座に通い始め8年の歳月で本
作を執筆した63歳の主婦。第158回芥川賞(平成29年度下半
期)受賞作です。
●若竹 千佐子/著 ●株式会社 河出書房新社/発行