函館市の男女共同参画情報誌「マイセルフ」は函館市女性センターで編集を担当しています。その情報誌の48号で、日頃センターの学習講座で講師をお願いしている臨床心理士の先生に『順のくぶし』というコラムを寄稿していただき、初めてその言葉を知りました。『順のくぶし』とは、山梨県の民間伝承のひとつの考え方で、子どもを持って親のありがたみを知った人が親に恩返ししようとすると「『順のくぶし』だから、自分が子育てすることで子どもに返しなさい。」という、親から子へ、子から孫へと続いてきた『恩返し』というより『恩送り』の習慣だそうです。
これを知った時に、2000年に公開されたアメリカ映画「ペイ・フォワード」を思い出しました。この映画は、主人公の11歳の少年が、「今日から世界を変えてみよう」という社会科の課題に「1人が3人の人たちに良いことをする」、という方法(渡す=ペイ・フォワード)で厚意を広げ、身の回りから少しずつ、みんなを巻き込んで世の中を変える方法を実践していくというお話です。なるほど、その人に受けた恩を返す(=ペイ・バック)だけでは、その厚意は当事者間だけで完結してしまいますが、渡すことで広がり、繋がっていく、まさに『順のくぶし』は『ペイ・フォワード』そのものです。
情報を集めたりサービスを受けることが、「人から人」ではなく、「インターネット」中心の現代では、こういった習慣は継がれにくくなっているのが現実なのかもしれませんが、ちょっと心に留めておき、機会があったら思い出したい習慣だと感じました。
函館男女共同参画メールマガジン「HAKODATE☆かがやきネット54号」(平成24年10月31日発行)より(加筆修正済み)