コラム「こころが育つ乳幼児期」

平成28年8月19日に函館市女性センターで開催された学習講座「こころを育てる『ほめ方』『叱り方』」を受講して、乳幼児期の子育てに大変参考になるお話を聞くことができましたのでその一部をご紹介したいと思います。

 

まず、乳幼児期には「脳」と「こころ」の発達が密接に関わっているということを脳の構造から学びました。生存に関わる脳幹や中脳は胎児期から幼児期に発達し、理性的思考を司る大脳は思春期に発達するそうです。そして、感情や愛着といった情動活動に関係する「大脳辺縁系」という部分が4歳くらいまでの乳幼児期に発達するために、こころを育てるには乳幼児期の環境が大きく影響を受けるようです。

 

ちょうどその時期には自分と他者を区別する「自己認知」が明確になり、他者の存在により自分のいいところや悪いところがわかるようになるといいます。ほめることも叱ることも他者との関わりの中でおこることなので、上手にほめたり叱ったりすることが重要ということなのですね。

 

この時期は自我が芽生え、第一反抗期と呼ばれる時期なので、どちらかというと親は「叱る」ことが多いかも知れませんが、感情に任せてしてしまう「怒る」という行為とはっきり区別しなければなりません。叱る必要があるのは、身に危険が生じたり、人に迷惑や危害を与える言動を取った時。まず子どもにきちんと話を聞き、なぜ叱られているのか、なぜその言動がいけないのかを説明して間違った行動に気づかせることが重要なのです。また、ほめる時もただ「えらいね」「すごいね」というほめ方ではなく、具体的に何がえらいのか、何がすごいのかを伝わるようなほめ方をすることが大事だといいます。

 

いずれにしても、乳幼児期の子どもを上手にほめたり叱ったりするのは、子どもと一緒に行動して、子どもをよく見ていなければできないこと。ほめることも叱ることも愛情あるコミュニケーションとして「あなたが大切なんだよ」ということが伝わる方法でおこなうことが大切だと、つくづく感じました。

Hakodate☆かがやきネット第107号 ★☆★☆ 平成28年8月31日発行 より

「自分だけはしないと決める」

平成27年12月1日より施行された「北海道飲酒運転の根絶に関する条例」では、7月13日を「飲酒運転根絶の日」と制定し、「飲酒運転をしない、させない、許さない」社会の実現に向けての施策を実施することとしています。

これは、北海道内で飲酒運転による交通事故が続いていたことと、平成26年に海水浴帰りの3人の女性が亡くなった「小樽飲酒ひき逃げ事件」が起きたのが7月13日だったことからこの日に決まったそうです。

 

平成28年の7月13日には、北海道内14か所で飲酒運転ゼロを目指す決起大会が行われ、その模様がテレビでもニュースで流れていました。その中のインタビューで、「一人ひとりが、自分だけは飲酒運転をしないと決めれば撲滅は可能です。」というような男性のコメントがありました。

以前、このコーナーで筆者も書きましたが、このことは、いじめや暴力にも通じることです。一人ひとりが、「自分だけは、いじめをしない」「自分だけは、暴力を振るわない」と決めて実行すれば、いじめや暴力の撲滅も不可能ではないはず…。ニュースの男性のコメントを聞いて、改めて感じたことでした。

HAKODATE☆かがやきネット106号    ★☆★☆  平成28年7月30日発行   より

「しつけと折檻」

平成28年5月に七飯町の山林でおきた「男児置き去り事件」は、日本中はもとより、海外にまでも波紋を引き起こしました。みなさんご存知のことと思いますので、事件の内容については触れませんが、この問題は、親が「しつけのため」として行った行為だったということです。これまで報道された幼児虐待やその他の事件でも、「しつけのために」という言葉をよく聞いて来たように思います。また、今の親たちが育ってきた環境の中でも、言うことを聞かなかったら、おやつをもらえないとか、欲しいものを買ってもらえないというような、何かしらの罰をあたえられた経験のある人も多いのではないでしょうか。

 

しかし、この事件後、様々なコメンテーターの意見の中で、「これは、しつけではない、折檻である」という言葉によって、こういう行為はしてはいけないということを、はっきり教えられた気がします。「折檻」とは、「厳しくしかったり、こらしめの体刑を与えること」とあります。つまり、罰を与えて、親の言うことを聞かせようとしているわけです。

 

以前、このコーナーでも紹介した「暴力の定義」を覚えていますか?暴力とは「怖がらせ、操る行為」です。言うことを聞かないのなら罰を与えるぞ、というのは、まさに怖がらせて操っているのですね

・弱いものを力で思いどおりにしようとする行為は「暴力」です。

・人間同士のコミュニケーションは「暴力」なしで成立するのが正常な形です。

 

        HAKODATE☆かがやきネット105号    ★☆★☆  平成28年6月30日発行   より

「結婚のかたち」

厚生労働省の「離婚に関する統計」によると、平成27年は22万5千組が離婚しているという推計が発表されています。また、同居期間別にみた離婚の構成割合の年次推移では、昭和末期まで最下位(第5位)だった「同居期間が20年以上」の割合は「5年未満」、「5~10年」に次いで第3位にまで増加しているようです。日本において、いわゆる「熟年離婚」が増えているということが、その統計のグラフにはっきりと表れていました。

 

さて、結婚生活や子育て等に関する悩みをネット上で解決する、あるサイトに寄せられた悩みの中で、決して夫婦仲が悪くなったわけではなく、『夫は退職、妻は子育てが一段落した段階で、お互いにやりたいことをやるために、別居の必要がある』という理由で離婚を考えている親を踏みとどめたいと相談をしてきた男性がいました。これに対してこのサイトでは、「卒婚」を提案することを勧めています。

 

「卒婚」とは、2004年に出版された「卒婚のススメ」の著者である杉山由美子さんによる造語だそうですが、最近では、有名芸能人の報道でも耳にするようになり注目を集めている結婚のかたちです。これは、あくまでも婚姻関係を解消せず、それぞれの新しい道に進んでいくライフスタイルのこと。相手と距離をおいてそれぞれ自分の人生を見つめ直す「夫婦のメンテナンス」のようなものですね。

 

これまでは「別居」とか「離婚」という言葉しかなかったために、別に離婚までしなくてもよかった夫婦が「熟年離婚」に踏み切り、今度は離婚のデメリットで悩んでいるという話も聞きます。この「卒婚」という言葉のおかげで、現状の不満や不安を打破することが出来、夫婦関係を改善できたという方もいることでしょう。

でも、そういう言葉が無くても、結婚のかたちは千差万別であっていいはずです。それぞれの夫婦が、人生の節目ごとに話し合って「お互いのために」最善のルールやかたちを決めるという習慣を持てたら良いです。

 

                           Hakodate☆かがやきネット第104号 ★☆★☆ 平成28年5月31日発行より

「若者に広がるWLB意識」

働きながら子育てをする人や、長時間労働によるストレスで健康を損ないつつある労働者が増加したことを背景として、1970年代以降の欧米で「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」が必要であると提唱されて来ました。近年の日本でも、個人のライフスタイルに合わせた多様な働き方の実現を目指すという考え方や、「ワークライフバランス」という言葉も浸透して来ているようです。(WLBと表記している紙面も見かけるようになりました。)

 

そんな中、「就職活動に取り組む学生の間で、ワークライフバランスを重視しながら企業を選ぶ傾向が強まっている」という新聞記事を目にしました。ある就職情報会社のリサーチでは、「時間内に仕事を終え、積極的に子育てする同性」を「すごくかっこいい」と思う学生が、男性で62.5%、女性で70.7%というアンケート結果に、「近年の学生はプライベートを重視した働き方に関心を持つ傾向にある」という見方をしています。

 

一方、そんな学生の意識の変化に合わせて、求人する企業側も「転勤なし」「残業なし」というような魅力ポイントを明記し、「子育てしながら仕事を続けられる環境」や「ライフスタイルを守りつつ、働き続けられる会社」を目指していることをアピールしているようです。

 

「少子化で人手不足の中、優秀な学生を採るため、働く環境を見直す企業は増えている」という見方や、「子育て中の女性の優遇策だけではなく、すべての社員があらゆる働き方ができるような制度を整えるべきである」という意見が、新聞の生活面に大きく取り上げられるようになった今こそ、言葉だけでなく多くの人の「意識」の中に浸透して欲しいと願う今日この頃です。

 

                       Hakodate☆かがやきネット第103号 ★☆★☆ 平成28年4月30日発行より